ブランの備忘録

主に個人の備忘録です。

ミサイル万能論の虚構。その3

 実はその3でこの連載おわりそうです。さて、前回はアメリカ空軍は純粋な制空戦闘機を持っておらず、そのためベトナム戦争でケチョンケチョンにされたというところまで話しました。決してミサイル万能論ではないのです。しかし、アメリカ海軍は違いました。そう、海軍は。

 その1で見た6つの機体のうち、唯一機関砲を搭載していなかったのが、アメリカ海軍が使用していたF-4です。ということは、このF-4はミサイル万能論にどっぷりつかって開発されたのか?というと実はそうではなかったりします。F-4が機関砲を搭載していなかったのには深い(別に深くはない)理由があるのです。

アメリカ海軍の事情

 まず、F-4が登場する以前、アメリカ海軍は純粋な制空戦闘機を作り続けてきました。そしてあのF-8が登場します。このF-8は純粋な制空戦闘機であり、機関砲を搭載、運動性能も重視されていました。

 しかし、このころからある懸念がアメリカ海軍の脳裏をよぎります。敵の爆撃機です。もし敵の爆撃機が自軍の制空戦闘機の射程の届かないところから対艦ミサイルを大量に放ってきたら…当時の艦載兵器ではとても防げたものではありません(現在でも大量に打ち込まれたら厳しいが)。そこで考えだされたのが艦隊防空戦闘機です。これは、敵の爆撃機が対艦ミサイルを放つ前に目視外の距離から長距離空対空ミサイルを放ち迎撃し、味方艦隊を守ろうというものです。この艦隊防空戦闘機第一号こそがF-4なのです。

F-4の役割

 F-4の役割は、目視外の距離から長距離対空ミサイルを放ち敵爆撃機を撃破することです。ここで、重要となってくるのは「目視外」です。まず、目視外で攻撃するので運動性能は重視する必要がありません。敵の見えない距離から曲芸飛行しても意味ありません。そもそもこのF-4の相手は戦闘機ではなく爆撃機です。爆撃機相手に運動性能なんていらないのです。そして、長距離空対空ミサイルですが、目標が爆撃機なので誘導精度や運動性能は重視しなくてもよいのです。相手は鈍重で運動性能は悪く、速度も遅いのですから。

併用こそが大事

 さて、アメリカ海軍はF-4をめでたく採用しました。そしてここからがアメリカ海軍の素晴らしところで、F-4を採用したのにも関わらず、F-8は退役させなかったのです。F-4は艦隊防空戦闘機、F-8は制空戦闘機としっかりと分類し、両者を併用していたのです。そのおかげでF-8はベトナム戦争でMiG相手に活躍し、ミグキラーと呼ばれるようになりました。というかこれ、F-8以外にMiGの相手のできる機体がなかったのがより顕著になる愛称ですね…。そして、本来F-4ベトナム戦争で戦闘機の相手をするはずがありませんでした。なんせ艦隊防空戦闘機ですから。しかし、この機体が空軍に採用されてしまい、対戦闘機戦闘、それも目視内での戦闘という想像もしていなかった戦場に放り込まれてしまいあのような結果となったのです。つまり、F-4がMiG相手に手も足も出なかったのは当たり前の話であり、それを対戦闘機戦闘の戦場に持ち込んだ空軍が悪かったのです。

空軍のメンツは丸つぶれ

 F-4ベトナム戦争でケチョンケチョンにされたイメージがありますが、実はそうではありません。米軍の機体では最も多くのMiGを撃墜しています。ちなみにF-4の次にF-8が多くのMiGを撃墜しています。一方空軍独自の機体は悲惨なものでした。F-105はなかなか善戦したもののやはり撃墜数ではF-4やF-8に劣ってしまいます。海軍のF-8が活躍し、そして空軍で活躍したF-4は海軍から流れてきたもの、とあっては空軍として悔しくて悔しくて仕方のないことなのです。しかも近接航空支援機としてその有用性を証明したA-1も海軍からの流れ者。もう、空軍は恥ずかしくて仕方なかったはずです。

大正義F-15

 そして、空軍は目覚めます。今まで自らが進んできた戦略爆撃一筋は間違っており、これからは純粋な制空戦闘機を中心とすべきとようやく気付くのです(実は気づけていなかったりするのだが)。そしてほぼ99.9%ジョン・ボイドたちの手柄でF-15を作り上げ、その後F-16なんてバケモノも手にしてしまいます。こうして、アメリカ空軍は現在へつながり、誰も文句の言えない世界最強の空軍になったのです。

一方海軍は

 ベトナム戦争までは、おっ海軍やるじゃんと思っていましたがじつはここからズルズルと急降下していきます。そう、F-14の登場です。F-14は世間ではかっこいいつよいで通っていますが、実は結構駄作機だったりします。というのも、まずコストが高すぎるのです。なんせ可変翼というシロモノに手を出してしまったのですから。長距離空対空ミサイルのAIM-54もこれまた微妙な仕上がりで、どうもパッとしないままその生涯を終えます。まあ高性能のレーダーは評価すべきでしょうね。あと見た目。

 F-14は高価になることは実は結構早い段階で判明しており、議会から文句を言われていました。このころ空軍はLWF計画を進めており、F-16勝利していました。議会からはF-16を採用したら?との声が上がります。このF-16は本当に完成度が高く、少し改造すれば艦載にも十分耐えうるシロモノでした。しかし、ここは海軍。空軍と同じ機体を採用したらメンツが丸つぶれになってしまうとなんと敗者であるYF-17を改造して採用することにします。曰く、「単発だといざって時に心配」だそうですが、いや…あんたらいままで散々単発機(A-4、F-8などなど)運用してますがな…。かくして、YF-17を改良したFA-18を採用し、運用していくことになるのです。